2020年12月

介護老人保健施設の「他科受診」。「Sensin NAVI NO.459」

  • 2020.12.07
  • Sensin NAVI
  • Posted by | sensin

皆様こんにちは、ブロガーのMるでございます。

今回お届けするSensin NAVIですが、「レッスンその459」となります。

 

 

 

 

 

・・・今回のお題は!介護老人保健施設の「他科受診」をお送りします!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「他科・・受診?聞いたことないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「介護保険施設であれば、老健のことだな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「介護老人保健施設、いわゆる老健ですね・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは!「Sensin NAVI NO.459」をお送りします。

 

今回は「他科受診」について紹介します。

 

介護老人保健施設(=老健)の入所者が、健康保険証を提示する施設へ受診することを他科受診といいます。

 

介護保険では制度上老健入所者に対する医師(管理者)の役割として、「療養上のお世話と管理」があります。

その管理の中に内服薬の処方や療養上の処置管理などが含まれているわけです。

そしてこの管理にかかる材料費=コストは、介護保険制度上「基本報酬分へ包括化」されています。

その為薬剤等の材料を別途請求することができないということです。

つまりは、高額な薬剤が必要な入所者へそれらを提供することは老健の運営上持ち出しとなるということ。その為、大半の施設は医療費額=薬剤料費の設定を独自に設けているようです。この管理に対し、老健では対応できない検査や時に取り扱えない薬剤等も当然存在します。

そうした場合に、老健の医師は別の医療機関の受診をお願いすることになるわけです。

 

 

 

 

それが「他科受診」です。

この他科受診は老健だけでなく、例えばほかの医療機関に入院されている場合の外来受診も同様な取扱いとなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに一般的には医療保険の主治医をかかりつけ医と呼びますが、

介護保険の老健入所の場合は老健医師が主治医となります。

つまりは在宅で生活されている方が老健に入所した場合、かかりつけ医から老健に所属する医師に変更されるわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、この他科受診ですが、広く一般的に知られていないと言われています。

老健がそもそもそのようなルールや立て付けがあることが知らない…と言うべきかと思います。

病院であれば、入院中なのでほかの病院に受診するのは難しいと感じますが、老健の場合一方で介護保険施設でもあります。

私たち業界では、介護老人福祉施設(=特養)と介護老人保健施設(=老健)の違いについてはよく熟知していたとしても、一般的にはそう変わらないようにみえるのがこの両者。

医師が常勤で配置されている、リハビリをしてもらえる、ずっと入所できない、老健のイメージは専らこうなのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・ですので、老健入所者が外泊や外出した際に、これまでの在宅でのかかりつけ医へ受診したり、薬をもらってくるケースがあります。

本人らは良かれと思って受診されたわけですが、実は保険適応とはならず、全額自費となるため入所中の老健負担となるわけです。しかも制度上老健に支払いの義務があるため、高額な医療費の場合は1回の受診で数万円の請求になることがあるので、老健側としては実に困った問題となりかねません。受診をする際には事前に老健への相談はもちろん、入所中の取扱いについての説明をしっかりと行う必要があります。

 

 

・・とは言うものの、入所前にご家族などに説明することになりますが、この理解を得るのがなかなか難しい・・・わけです。

老健で対応するのは、専属の支援相談員が主となります。

 

 

 

 

 

 

 

しかしながら、大半は「病院へ行って薬貰うことの何が悪いのか?」

 

それが一般的な返答と言えます。

しかし制度上の定めであることから、

支援相談員は理解を得られるよう説明していく必要があります。

 

 

 

例えばこんなやり取り・・・。

 

「入所前に他科受診のことを説明した事をお忘れでしょうか」

「老健に入所されている間は、当施設の医師が主治医となります」

「歯科以外は基本ご遠慮ください。それ以外の受診を希望されるのであれば、事前の相談をお願いします」

「医師の内服薬の処方は介護保険の適応のため、入所以前のように医療保険で薬の処方を受けると保険の適応外となります」

「外出時や外泊の際の受診は、事前に施設までご連絡ください」

「全額実費となるため、必要な場合は事前に相談してください」

 

 

 

・・・などなど、正直わかりにくいかと。

 

 

 

 

 

 

 

なぜなら本人やご家族がなにか損益が生じるかと言うと、そうではないからです。

基本的に負担するのが老健側ですので、老健側の言い分としてはああなるわけです。全国の老健で働く、また働いた方の中には、少なからず同様のやり取りを経験しているはずです。この手の話は非常によくある話で、時にトラブルや苦情に繋がることもあります。制度上は「老健入所者が医療保険を利用してはいけない」というものがないゆえに、トラブルが生じやすいのが実情です。つまりは、老健に入所された後の本人とご家族の理解が重要なポイントとなるわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに老健入所した方の最大の目的は「在宅復帰」です。そしてリハビリテーションを専門にした施設です。

しかし一方で医療依存度の高い方は、上記の理由から敬遠されがちになります。福祉事業とはいえ、前提にあるのは慈善やボランティアではありません。

老健で働く支援相談員のほか、介護支援専門員やセラピスト、介護職員、看護職員とその職種はさまざまです。

そうした職種と配置基準に係る人員に対する人件費も必要なことから、利益度外視の調整はやはり難しくなります。

つまりは、新薬などの高額な薬材料費がかかる入所希望者の入所判定のハードルは極めて高くなるわけです。

この実情と課題は、昔も今も変わらず全国の老健の共通事項と言えます。他科受診を決して制限するものではなく、そのものを否定しているわけではありません。

あくまで制度上の位置付けであること…それをお伝えしたいわけです。そして他科受診を希望される場合、まず入所先の支援相談員や介護支援専門員などへの事前相談をお勧めします。

 

あとで他科受診の事実が判明した場合の手続きはもちろん、これからの双方の関係性を保つ上でも必要なことと言えます。双方で話し合い、受診の必要性はもちろん、きちんとお互いが納得のもと前に進めていくことこそ、入所されるご本人にとってよりよいケアに繋がるものではないでしょうか。

 

 

 

最後に、なかなか調整したくても断らざるを得ない、運営を優先するがゆえの悩ましさもある、それがいまの老健なわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

以上!介護老人保健施設の「他科受診」。をお送りしました。

それではまた。